小さな風景とは?
小さな風景とは、人がある環境やそのときの状況に主体的に反応しながらつい関わってしまうような場所の構造を扱う方法論であり、人が場所をつくろうとする日々の小さな実践や意図から空間を考えていくために建築家・乾久美子氏が提唱するものである。
“気になる”場所や風景を膨大に収集し、環境が人に働きかける「サービス ①」(木陰は木が人の居場所となる影を提供している、地域のお祭りで出される手作りの山車は祭りのにぎやかさのみならず生きた共同体の存在感を示しているetc.)に内在する普遍的な構造の質や多様性を見出していき、日常的に発見されるチャーミングな場所で見られる人とサービスとのダイナミックな関係をネーミングしている。
建築計画の研究者である鈴木毅氏の居方とも通じる考え方だが、筆者が考える両者の違いは、居方は人間が他者を含めた環境からどのようにいま・ここに居る環境を認識しているのかという環境の認知やその質を重視しているのに対し、建築家である乾久美子氏の小さな風景は人間が意図をもって環境に働きかける実践やその結果生まれる空間の構造を重視している点である。鈴木が他者を環境のナビゲーター・代理人的役割と述べるのに対し、乾は「建築は生き生きとした世界を発見するためのガイドとなるべきだ ②」と述べていることからも、両者が重視するスタンスの違いを読み取ることができる。
また、上記の比重の置き方の違いから生じる決定的な差異は撮影される写真で、居方は他者が入り込むシーンとして必ず撮影される一方、小さな風景は撮影される写真に他者は必ずしも入り込まず、人が環境へ働きかけた実践の痕跡が入り込むことになる。
【参考文献】
① 乾久美子:風景のポートレイト, 乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室 編著:小さな風景からの学び─さまざまなサービスの表情─, TOTO出版, 2014.4
② 乾久美子:小さな風景と建築, Inui Architects─乾久美子建築設計事務所の仕事, LIXIL出版, 2019.3
* このページでは、上記の方法論をもとに、筆者が撮影した“気になった”場所や風景を小さな風景のネーミングに当てはめて紹介しています。













